本格的な暑さを迎え、スタッフの皆様におきましては、ますますのご活躍に敬意を表します。
国連児童基金(ユニセフ)が先進国の子どもの「幸福度」に関する調査結果を発表しました。日本は43か国中14位で、前回(2020年)の20位から順位を上げましたが、自殺率が高く、精神的幸福度が他国に比べて低いなどの課題もあります。調査では、「幸福度」を3分野で評価しており、「身体的健康」が1位で、「学力や社会的スキル」は12位、「精神的幸福度」で32位でした。子どもの貧困に詳しい東京都立大学の阿部彩教授は、「コロナ禍による経済的格差の拡大で子どもたちが取り残されている」と指摘しています。
一方、高齢者福祉分野においては、体が衰えても住み慣れた自宅で過ごしたい、そんなささやかな願いを支える「訪問介護」が危機的状況にあります。2024年の改定では、施設での介護を含めた全体では1.59%引き上げられましたが、訪問介護は2〜3%引き下げられ、民間の調査によると、24年度の訪問介護事業者の倒産は、過去最多の86件を記録。今後も倒産増は避けられないと予測されています。このことは、今や介護が必要な人だけの問題にとどまらず、これから高齢化するすべての人にとっても、また介護職として活躍されてきた方たちにとっても死活問題であり社会的問題です。
経済界からの例をあげると、キリンHDがヘルスサイエンス事業にとりかかったのが1980年代でした。きっかけは、社会課題の解決が会社の成長と経営方針の転換だったといわれています。現在では、酒類・飲料や医療のみならず、ヘルスサイエンスを担う人材育成に力を注がれたりと、人の教育・育成を主眼とした人的資本経営に取り組まれています。現在のキリンHDエグゼクティブを任されている磯崎功典氏は「苦しい時もあったが、その時こそチャンスと考え、修羅場で人を育ててきた。人はつらい経験が肥やしとなる。」の信念のもとでリーダーシップを発揮してきたそうです。
どんな規模であれ組織の長として腹のくくり方や発言の仕方についてを、私は歴史小説「坂の上の雲」から多くを学びました。例えば東郷平八郎司令長官の秋山真之参謀への信頼と、いざというときの決断力や責任感等、自分自身の理想郷としての指南書でもあります。厳しい時代を乗り越えなければならない今こそ経営実践で活かしたいと思います。
令和7年7月1日 理事長 山口浩志
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