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〜実践の中からNPO経営の哲学を生み出す〜 (令和6年12月) |
心せわしい年の瀬となりました。地域の皆さま及び関係者各位におかれましては、日ごろからのご指導ご協力に心から感謝申し上げます。 武道では、ただ試合に勝つことや単なる強さを求めるものではなく、目指す道を重要視するという習わしがあります。心技体を鍛え、努力し、勝てば達成感があることは他のスポーツを同じですが、勝利を決めたとしても、負けた相手の心情を思いやる気持ちがあって初めて勝利者となるといわれています。たとえば剣道には、「残心(ざんしん)」という言葉がありますが、「心を残す」ことで、打ち終えて終わりではなく、次の備えをしっかりして気をつなぐという意味です。 「人生100年時代」を迎え、65歳以上で働く人が増えています。現役世代の人口が減少する中、意欲のある元気な高齢者に社会の「支え手」に回ってもらおうと、政府が高齢者雇用を推進していることが背景にあります。70歳代で働く中には、現場管理、採用担当者への助言、有資格を活かす等の期待がかかる一方、ご本人たちからも「人とコミュニケーションをとって働くことが楽しい。」「体が続く限り世の中のお役にたっていきたい。」といった声があるようです。 社会が混乱し、先行きが見えず、不景気になったりすると、人々の関心がしばしば哲学に向かいます。大阪大学名誉教授である鷲田清一氏によると、「時代を見通すにはそれぞれの学問の根本に哲学がないと行先を見失います。すなわり数字や理論だけで考えだすものでなく、人が何を大切にしてきたのか、その真実をくみ取ることが重要です。ニーチェやプラトン、パスカルも論文を書いたわけでなく現実の中から生み出された思想を説いたと言われている。また先人たちは決して一人で考えたわけではなく、コミュニケーションが哲学となり、思考には大切なことで、対話の中から別の視点に気づき、新たな方向へと導かれる。」と説いています。そして、「すぐに答えの出ない問題を緻密に濃密に考え続けることです。それはしんどい作業ではありますが、そこからしか新しい知は生まれてこない。」とも教えています。 今はじっとしていて動かないでいれば、嵐が過ぎ去り、そのうち元に戻るという時代ではありません。嵐に伴って居場所も動いてしまいます。その新しい居場所に向かって積極的に踏み出す柔軟性を求められる社会構造であることを認識しなければなりません。 これからの時代に求められるNPO経営哲学を実践の中から生み出していきたいと思います。 令和6年12月1日 理事長 山口浩志 |