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〜高齢者と運動〜 (平成25年11月) |
いつしか夜寒の身にしみる頃となりました。地域の皆様方には、日頃からのご支援ご協力に心から感謝いたします。 先月10月13日の「体育の日」に合わせて、文部科学省が2012年の体力運動能力調査を発表されていました。これは、1964年の東京五輪を機に毎年実施し、全国から6歳〜79歳の7万4千人を選び、筋力や柔軟性、持久力などの様々なテストで分析されます。 調査結果の得点合計では、70歳〜74歳は2000年の65歳〜69歳、75歳〜79歳も2000年の70歳〜74歳の水準に並び、過去最高記録を更新したそうです。 一方で気になるのが、子供の体力の低迷です。持久力では、13歳男子で、85年度の6分66秒から12秒遅くなったり、「握力」や「ボール投げ」も低迷しているようです。原因としては、ゲームの普及での遊びの変化や、また「握力」では、生活の中で水道の蛇口をひねる動作が減ったこと、「ボール投げ」は、野球よりサッカーを楽しむ子供が増えたこと、などが考えられています。 このことは、高齢者の「リハビリ」についてもあてはまる考え方かもしれません。 リハビリとは、治療を目的として専門職が行う「医学的リハビリ」と、日常生活動作の中で行う「生活リハビリ」とがあります。 当法人のような福祉施設など暮らされる高齢者の、移乗や食事、排泄、入浴等の行為の際に、できる限り残存能力を活かした生活ができる環境の中から、何らかの自立向上の成果が出ることも少なくありません。 近代日本画で横山大観や下村観山が知られていますが、彼らが最も薫陶した師匠が、岡倉天心といわれます。しかし、岡倉は画家や彫刻で生計を立てることもなく、「筆を持たない芸術家」とたたえられていました。岡倉によれば、「たとえば『明月』という題でも、月を描いてはいけない。そこにあるもので『月』を感じさせることが大事なことです。」と説いたそうです。すなわち、輪郭でなく色の組み合わせや演出によって『月』の静けさを表現することを望んだといわれます。 私たちの業務の中でこのことを例えるとすると、リハビリ器具にたよらなく、リハビリを感じさせるケアが求められているのかもしれません。そういう日常生活ケアの工夫の中からも、高齢者の体力維持向上に取り組んでまいりたいと思います。 平成25年11月1日 理事長 山口浩志 |