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〜認知症ケアと国家戦略〜 (平成26年12月) |
すっかり冬枯れの季節となりました。地域の皆様におかれましては、日頃からの法人運営へのご支援ご協力を賜り、心から感謝申し上げます。 先月東京都内で、主要7か国(G7)やWHO関係者が集まり、認知症サミットが開かれ、「認知症の予防とケア」をテーマに意見が交わさたようです。 英国では、40歳以上を対象に、喫煙、飲酒、運動不足など、生活習慣を改善するカリキュラム開発を、米国では、25年までに効果的な予防法と治療法の確立と、患者・家族のサポートの拡大を、カナダでは、認知症の女性が急速に増加したことにより、女性の脳の健康の研究を進めること、フランスは、若年性認知症や複雑な症状を診断できる専門的な医療機関を全国にすでに配置していること、等が報告されています。また、高齢化がハイペースで進む日本の国家対策には、世界各国が注目を集めていることもわかったそうです。 これを機に、安倍首相は、認知症対策を「国家戦略」と位置づけ、全省庁あげて取り組むと表明されたり、本県でも先月、2015年から4か年の「県地域福祉支援計画」がまとめられ、福祉サービスの充実や地域福祉の担い手を含めた人材育成などが盛り込まれました。 このように、国・県あげての体制づくりの充実は、現場からは期待が集められていますが、在宅や施設現場ではまだまだ甘くない現実にあります。例えば、救急搬送先の9割以上の病院では、転倒の危険性や意思疎通の困難なことなどで、対応困難との意見があるようです。また、全国世論調査でも、認知症になったら自宅では暮せられない、と考える人が約8割に上がることもわかっています。 認知症になっても地域で暮らし続けられるためは、家族介護や地域住民の認知症理解の他に、話し相手の存在や自分をありのままに受け入れてもらえる人の存在は重要なカギかもしれません。 イギリスの歴史学者、A・J・トインビーは、「文明は挑戦と応戦を繰り返しながら成長を続けてきている。」と説きます。 認知症対策には、世界中どこの国にも言えることでしょうが、奇策はないでしょう。そのためにも、日々の対話や互いの気づきから生まれるその人なりの支援によって、国家戦略を超える取り組みに挑戦していきましょう。 平成26年12月1日 理事長 山口浩志 |