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〜靴みがきのおじさんとの会話〜 (令和4年5月) |
風薫る季節となりました。関係者各位におかれましては日ごろからご協力ご指導を賜り心から感謝申し上げます。 先日、東京出張中での出来事ですが、重要な会議への出席にも関わらず、自分の革靴があまりにも汚れていたので、羽田空港でふと靴みがきコーナーがあり、初めて靴を磨いていただきました。何か大それた行為のようで気がひけたのですが、プロに磨いてもらって少しはきれいにして出席するのが礼儀と思ってお願いしてみました。磨いている間、靴の消耗についてお聞きしましたら、靴を消耗品として扱うか、固形消費財として扱うかの違いであるとのことでした。長い方であれば50年でも使っており、逆にケアせずほったらかしにして使えば1年でぼろぼろになるそうです。 また、「自分は靴を磨いているというより、人間でいうとスキンケアをしているというイメージです。靴とどう向き合うかが大事で、大切に扱ってくれると靴もうれしいと思います。 革靴はたいてい牛の皮から作られているので、牛の命を削ってできているのです。命を大切にする気持ちと靴を大切にする気持ちに変わりはないのです。」との話に感動しました。 そして、「靴を大切にすると幸せな場所へ運んでくれるというヨーロッパの言い伝えがありますから、あなたはこれからきっといい場所へ運んでくれますよ。」と言われて、ちょうど15分が過ぎて終えました。 「優れた看護」を大切にしている名も知られていないナースは現場にてたくさんいるという話を聞いたことがあります。それは、知識・技術・洞察力・誠実さ全てを傾けて、その人の皮膚の内側に入っていく看護を実践している人たちです。「優れた看護」の背景にはヴァージニア・ヘンダーソンの「看護の本質」に出てくる「看護の卓越性」の言葉に由来します。つまり五感を活かして「見る・聞く・嗅ぐ・触れる・味わう」を基本に、「見落とさず・忘れず・思い込まない」看護を大切にしている人たちのことを表しています。 羽田空港で出会った靴みがきのおじさんからは、命をはぐくむ「優れた靴の看護」を教わった貴重な体験でした。 令和4年5月1日 理事長 山口浩志 |