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〜不安定な時代だからこそ「多孔的な自己」を考える〜 (令和4年3月) |
日ましに春めいてまいりました。関係者各位におかれましては日ごろからご協力ご指導を賜り心から感謝申し上げます。 北京オリンピックが華やかに終わりました。冬のスポーツ祭典の感動的な場面の数々や地元選手たちへ各地域からの応援等、たくさんの勇気や希望を与えてもらえました。反面、判定基準では今後のあり方について禍根を残した大会でもありました。 さて、オミクロン感染拡大が猛威を振るっておりますが、問題は出口戦略です。いつまでも永遠に続くとは誰も思っていないだけに、今後の深刻な課題が山積みです。徳島大学山本哲也准教授による2020年から21年にかけての計4回発出された緊急事態宣言下の心の健康調査では、社会的に孤立していると感じる人の割合が増加しているようです。さらに「物事に対して興味がない」「死んだ方がましだ」あるいは「自分を何らかの方法で傷つけようと思ったことがある」などの精神的不調状態が18歳から29歳の若者層に顕著に多かったそうです。 一方、昨年の自殺者数は、警察庁の速報値では、2万830人に上がっています。中でも経済・生活苦が原因の自殺が増えていることが深刻な問題となっています。 また、岡山市の5歳の真愛ちゃんの虐待による死亡事件があったり、異常な時代としかいいようがありません。 これらの現象はややもすると、誰もが「期待に応えらねばならない」「頑張るべきだ」と思わざるを得ない世の中になってしまっているのかもしれません。 それが、思考や行動を制限してしまい、他者との違いを認めることや自分らしさを見失ってしまっているのかもしれません。 米国の心理学者であるキャロル・ギリガンは著書「ケアの倫理」の中で「多孔的な自己」を提唱されています。孔(あな)があいた隙だらけの自分。だからこそ人が入りケアの余地や支えあいの場面が生まれます。すなわち自分にできることを貢献するだけでも大きな存在価値があります。 このような不安定な時代だからこそ福祉現場の中でNPOらしい支援の在り方を考えていきたいと思います。 令和4年3月1日 理事長 山口浩志 |