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〜世阿弥「まことの花」から地域福祉を考える〜 (令和3年8月) |
残暑ひときわ身にこたえる今日この頃ですが、関係者各位におかれましては日ごろからご協力ご指導を賜り心から感謝申し上げます。 能の大成者、世阿弥は72歳で時の将軍、足利義教に疎まれ、佐渡に流されました。その2年前には長男観世元雅に先立たれ、失意の中で佐渡に渡った世阿弥が地元の人たちと触れ合う中で、理想の美を「まことの花」と表現したと、「風姿花伝」の中で記されています。 総務省が発表した2020年国勢調査では、総人口は1億2622万人で、前年度比86万人減少となり、人口が増えたのは東京など大都会を抱える自治体を中心に9都府県にとどまり、38都道府県で減少しています。ただし、子育て支援の拡充などで人口を増やした市町村も約300自治体あり、今後地方の縮小を食い止める知恵と工夫が問われます。 また、厚労省によると、団塊の世代が全員75歳になる2025年度には、介護職員が約243万人必要になると試算されており、約32万人が不足することになるようです。ちなみに本県では、約700人の不足が生じる見込みと予測されます。 一方、コロナ禍による影響で介護分野を取り巻く環境はますます厳しくなってきます。今後は人材の不足やサービス利用者の減少、感染防止対策費の負担増など、ケアの質の向上と合わせて、これらの課題に立ち向かわなければなりません。しかし、ただ単に、新たな枠組みを作る事より、現在までに作り上げてきた地域の社会資源や機能を活かしたやり方を考えることも大切だと思います。 元経済産業相ヘルスケア産業課長であった江崎禎英氏は、「高齢化は私たちが健康長寿を求めた結果であり、対策すべき課題ではない」という考えで、「高齢化対策」という言葉を捉えなおし、介護を「最期まで自立した生活を目指す」ことを目的としたそうです。すなわち、誰かの役に立って「ありがとう」と言ってもらえる生活を生み出すためにも、新たな産業を創り出す民間の知恵と力を国として支援したい、と指示していたそうです。 世阿弥が苦悩の中から見つけることができた「まことの花」によって変わることができ、また世阿弥の周りの人々をも変えていったように、地域で暮らし続けるための福祉の花を見つけて磨いていくことが私たちNPOに課せられた役割だと思います。 令和3年8月1日 理事長 山口浩志 |