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〜「三方よし」と「衰退の五段階」を考える〜 (平成30年10月) |
木々の葉先に秋の気配を感じる頃となりました。関係者及び地域の皆様におかれましては、日頃からのご支援ご協力に対しまして心から感謝を申し上げます。 「三方よし(客よし、店よし、世間よし)」の教えで知られる近江商人は、滋賀県を拠点として全国を行商された人たちとして知られていますが、江戸時代から明治時代にかけて、「三方よし」を生涯にわたって実践された企業家に伊藤忠兵衛氏がいます。 伊藤忠商事創業者である伊藤氏は、1858年に繊維製品を泉州(現大阪府南)に売り歩く行商からの始まりでした。彼は浄土真宗の熱心な信者で、自分の利益のみを追求することをよしとせず、商品を通して地域に暮らす人のつながりが強まることこそが、「世間よし」を生み出すことであることを実践されたといわれます。 現代版として、東近江市で小串医院院長を務める小串輝男先生主宰の、「三方よし研究会」があります。平成19年から地元の多職種の人たちと共に活動を開始され、毎月1回テーマを変えて話し合ったり、勉強会を開催したりして、医療福祉版三方よしとして受け継がれています。 目的は、1)安心して暮らせる仕組みづくりで環境によし、2)在宅ケアで医療費が削減して経済によし、3)地域とかかわる時間が増えて社会によしです。 国立社会保障・人口問題研究所によりますと、2016年度の社会保障給付費は、年金46.5%、医療32.8%、介護や子育てが20.6%と比率が出されましたが、中でも介護の伸び率は2.1%で過去最低のようです。これは、軽度利用者へのサービス抑制が要因と思われます。 そして、総務省データによる高齢者の就業率数は、807万人と、生産年齢人口(15歳〜64歳)が6割を切り、シニア世代の労働環境整備を急ぐ必要性が浮かび上がっております。 東近江市での活動実践での成果と、様々な保健・医療・福祉のデータ等から考えてみると、地域格差の原因は地域からつくられているように思えます。 ジム・コリンズの著書「ビジョナリーカンパニー」に、成長から生まれる怠慢、規律なき拡大路線、リスクと問題の否認、一発逆転の追求、凡庸な企業の転落が衰退の5段階と説明しています。 これまでのNPO経営の経験を活かし、衰退路線でなく、新たなる発想で地域実践を積み重ねてまいります。 平成30年10月1日 理事長 山口浩志 |