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〜「5秒×3回=15秒」を意識した接遇のすすめ〜 (令和4年8月) |
炎暑しのぎがたい今日この頃です。関係者各位におかれましては日ごろからご協力ご指導を賜り心から感謝申し上げます。 6月下旬の徳島新聞読者の手紙欄に、小学校男性教員の方から「勉強と生活のつながり大切」と題した投稿がありました。教師として、子どもたちになんのために勉強するのかを教える際に、模索した内容の意見でした。 彼は、子どもたちと共に自らも学習することで新たな気付きや発見を共有でき、いくつになっても勉強は大切だということを、実践を通して教えているようです。 さて、全国の警察に2021年に届け出があった認知症を原因とする行方不明者は過去最多の1万7636人と、9年連続の増加でした。そのような中でも、地域では様々な工夫で命を守る取組があるのも事実です。例えば群馬県高崎市が認知症高齢者に無料でGPSを貸し出したことで、河川敷で80歳代の男性を保護できたり、長崎県雲仙市では、防災無線で高齢者男性の特徴を放送したことで所在確認できた等それぞれに成果をあげています。一方、ソフト支援面では、日本福祉大学の野村豊子先生などが研究される「回想法・ライフレビュー」という考えに基づく実践事例もあります。幼い頃からの出来事や、香りや味といった五感の刺激に結びつけることで、落ち着いた精神状態に導いたり、過去の記憶をたどり語り合ったりして、当事者のもつ「かけがえのない」エピソードを振り返ったりし、進行予防や生きる活力への成果を目指す手法です。 別の角度から考えてみますと、業績悪化のスカンジナビア航空を立て直したヤン・カールソン氏がいます。彼は顧客と接する最初のわずかな時間の接客態度が企業の成功を左右すると述べています。「お客様の搭乗時のご挨拶、フライト途上の笑顔、お客様が降りられる時のご挨拶」と、5秒×3回の15秒を大切にすることを徹底してきたそうです。このことは認知症ケアにも通じる教訓でもあります。認知症高齢者もさわやかなご挨拶の一瞬一瞬のケアを積みかさねることで、良質な対話が生まれその人のもつ「かけがえのない」エピソードが導かれることもあると思います。そうして適切なケアマネジメントにつながるものと信じてやみません。 これまでも認知症ケアについては何度も紙面を通して取り上げさせていただきましたが、未だ道半ばです。引き続き、認知症ケアも含め良質なケアのあり方について学習を積みかさね、新たなる気づきや発見を模索し、スタッフたちと共有していきたいと思います。 令和4年8月1日 理事長 山口浩志 |