鳴門市民調査結果報告 |
Ⅰ.調査概要 |
平成20年に鳴門市で行われた「高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画づくりのためのアンケート」調査の台帳を利用し、その中で、要介護1以上の対象者1254名に配布。調査票の回答者は、調査票が郵送された方を主としてお世話している人とした。回収数は570票であったが、データクリーニングの結果、本調査の対象である「お世話されている方」ではなく、「明らかにお世話される方」本人が回答していると思われているものが15票、ほとんどが無回答であったものが13票あり、有効回答数はこれらを抜いた533票(1票は本人が回答していると思われかつ、ほとんどが無回答)、有効回答率は 42.5%であった。 |
Ⅱ 調査結果 |
1.介護者(お世話をしている人・調査回答者)の属性 |
1-1. 介護者の性別(問1) |
本調査の回答者である、介護者の性別は男性が四分の一、女性が四分の三を占める。 |
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1-2. 介護者の年齢(問2) |
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介護者の全体の年齢は、最年少が25歳、最高齢が91歳、平均が64.7歳であった。女性の平均は64.2歳、男性の平均は66.3歳と男性の平均の方が高い。これは、女性は、40代7%、50代28%、60代33%、70代22%、80代8%であるのに対して、男性は、40代3%、50代24%、60代37%、70代17%、80代17%と、女性に比べると80代の割合が高いことによる。 |
1-3 介護者の続柄(問3) |
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被介護者からみた介護者の続柄で最も多いのは妻の27%で、次いで娘の21%、嫁の18%、息子の13%、夫の9%であり、介護事業者も9%と、割合としては夫と同程度の割合であった。 |
1-4 介護者と被介護者の時間距離(問3SQ1) |
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介護者の四分の三は被介護者と同居していた。別居している場合でも、4%が徒歩圏内、9%が自転車・自動車で30分以内に住んでおり、9割近くが比較的近くに住んでいる。自転車・自動車で30分以上かかるところに住んでいるのは3%であった。約1割は介護事業所により介護されている。 |
2. 被介護者の属性 |
2-1 男女別被介護者の年齢構成(問4,5) |
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被介護者全体の平均年齢は82.2歳であり、大きな男女差はなかったが、世代別の分布では多少違いが見られる。女性は80代が半分を占め、その両側の60代・70代が約四分の一、90歳以上が四分の一を占める構成であるが、男性は、70代、80代がほぼ4割ずつを占め、これらで全体の8割をしめ、60代、90歳以上が1割ずつという構成を示している。 |
2-2 居住地別被介護者の年齢構成(問5、6) |
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「大麻町」居住者の被介護者の平均年齢は82.5歳、「大津町または撫養町木津地区」は81.8歳、「鳴門町鳴門東地区または瀬戸町または北灘町」は83.2歳、「撫養町川東地区または里浦町」は81.4歳、「撫養町川西地区(木津を除く)または鳴門町鳴門西地区」は82.4歳と、居住地における大きな差もなかった。 |
2-3 居住地別の要介護度(問6、7) |
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居住地別にみた被介護者の要介護度である。居住地による要介護度の差はほとんど無いが、「鳴門町鳴門東地区・瀬戸町・北淡町」において要介護4割合が若干高い傾向が見られた。 |
2-4 続柄別の要介護度(問3、7) |
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続柄による要介護者の差はほとんど無いが、「介護サービス事業者」の場合に要介護1が多く、「妻」の場合に要介護1が少なく、要介護5が高い傾向が見られた。 |
3 認知症について |
3-1 居住地別の認知症の有無(問9) |
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居住地別に被介護者の認知症の有無を尋ねた結果が以下の図である。被介護者全体の半数において、認知症が認められる。地区別に大きな差は見られないが、若干「撫養町川東地区・里浦島」の認知症ありが少ない傾向がある。 |
3-2 続柄別の認知症の有無(問9) |
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被介護者の続柄別に、お世話をしている方の認知症の有無を表したのが以下の図である。続柄の違いにより、認知症を持つ介護者の割合は異なっている。続柄が、嫁、息子、娘の順で認知症をもつ被介護者が多く、これらは5割を越えており、認知症に対して、世代間で介護している様相がみてとれる。但し、夫、妻においても、被介護者の約4割が認知症の方を介護している。介護サービス事業者が主たる介護者の場合は、認知症の割合が少ない。 |
3-2 認知症・痴呆症の症状(問10) |
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認知症・痴呆症に関わる14の具体的な症状についての有無を尋ねた結果が以下の図である。「昔のことは覚えているが最近のことは分からない(記憶力の低下1)」は9割の方に症状が見られた。半数以上にみられた症状は、「今までできていたことができなくなったことなど不安感」は64%、「病気にかかりやすくなった、転びやすくなった(身体症状)」58%、「今がいつなのか、ここはどこなのか分からなくなる状態(見当識の低下)」は55%、「最近のことも昔のことも忘れている(記憶力の低下2)」が53%であった。 |
図示はしていないが、症状ごと、居住地、続柄とのクロス表分析を行った。居住地に関しては、「異食・過食」において、大麻町の症状ありの割合が高く、木津町・撫養町木津地区での症状有りの割合が低い傾向が見られた。 |
また、続柄に関しては、「判断力の低下」において、続柄が嫁である場合症状がある割合が高く、夫の場合症状がある割合が低い傾向、「睡眠に問題がある」において、娘で症状ありの割合が高く、介護サービス事業者において症状ありの割合が低い傾向がみられた。 |
【指標の定義】 |
徘徊(家の周囲で知っている道でも迷う、無目的である歩行など) |
依存(不安感が強くなり、誰かの後ろをついて歩くなど) |
異食・過食(食事をしても「お腹をすいた」と訴える過食がみられたり、食べられないものを口に入れるなど) |
幻覚(周囲の人には見えていない人・物などが見えている、聞こえない声・音などが聞こえているなど) |
意味もなくイライラする(または周囲の人に対しての攻撃行動がある) |
判断力の低下(寒くても薄着のまま外に出る、真夏でもセーターを着ているなど) |
睡眠に問題がある(夜眠れない) |
妄想(しまい忘れたり、置き忘れたりした財布や通帳を誰かが盗んだ、自分に嫌がらせをするために隠したなどを訴える) |
記憶力の低下2(最近のことも昔のことも忘れている) |
見当識の低下(今がいつなのか、ここはどこなのか、わからなくなる状態) |
身体症状(病気にかかりやすくなった、転びやりやすくなった) |
不安感(今までできていたことができなくなったこと等への不安感) |
記憶力の低下1(昔のことは覚えているが最近のことは分からない) |
3-3 認知症があることで困っていること(問11) |
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認知症があることで困っているこの中で、困っている割合(少し困っている+非常に困っている)が最も高かったのは、「親族でみてくれる人がいない」で、半数以上が困っていると回答している。次いで、経済的な問題であり、認知症に限らず、介護一般で課題である、人的サポートと経済の問題の重要性が再確認される。 |
地区別と、続柄別に、認知症があることで困っていることとのクロス表分析を行った結果、地区別では「公的なサポートが受けられない」において多少地域差が見られたが、続柄では大きな差は見られなかった。 |
3-4 地区別の認知症があることで困っていること(問11) |
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被介護者の居住地と認知症があることで困っていることの7つの質問それぞれとクロス表分析を行った結果、地区毎の差が大きかったのは、「公的なサポートが受けられない」のみであった。「大麻町」では、非常に困っていると回答した割合が9.6%と高かった。また、「撫養町川東地区・里浦町」では少し困っている割合が3割を示しており、非常に高い。一方、「大津町・撫養町木津地区」では9割以上が困っていないと答えており、地域差が見られた。 |
3-5 認知症についての相談相手(問12) |
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認知症についての相談相手(複数回答)について表したのが下図である。特に誰にも相談していないとの回答が全体の約1割あった。 |
もっとも相談が多かったのが、「介護支援専門員」で約5割、次いで「主治医」の43%、「介護サービス事業所」の33%と、相談相手としてなる割合が高い群を形成していた。次いで、一割ぐらいを「専門医療機関」「市町村窓口」「地域包括センター」がそれぞれ占めていた。「民生児童委員」「保健所」はあまり相談相手とはなっていなかった。 |
3-6 居住地別の相談相手 |
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居住地と相談相手のクロス表分析を行った結果、「市町村窓口への相談」において地域差が見られた。「撫養町川東地区・里浦町」において相談ありの割合が高く、「撫養町川西地区・鳴門町鳴門西地区」「鳴門町鳴門東地区・瀬戸町・北灘町」で相談なし割合が高い傾向にある。 |
3-6 続柄別の相談相手 |
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続柄と相談相手のクロス表分析を行った結果、「地域包括センター」への相談において差が見られた。介護サービス事業所は、地域包括支援センターへの相談ありと答えた割合が高く、親族による介護に比べると、介護サービス事業者は、地域包括支援センターとの媒介機能を果たしていることが見出された。 |
4 閉じこもり |
4-1 外出頻度(問13) |
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被介護者の外出頻度を尋ねたところ、「ほとんどない」22.6%であり、約8割は月に1回以上外出をしていた。「月に1回程度」は3.8%、「月に2,3回程度」は9.5%、「週に1,2回程度」は23.2%、「週に3,4回程度」は最も高く25.9%、「週に5回以上」は15.0%であった。被介護者の世代、居住地、要介護度と関連があると考え、クロス表分析を行ったが、これらの変数との強い関連は見出せなかった。一方、介護者の続柄により、外出頻度の差が見出せた。 |
まず、妻は、「ほとんどない」の割合が高く、「週に5回以上」の割合が低く、妻により介護されている夫の場合、外出頻度が他の場合に比べると低いことが見出された。同様に、介護サービス事業者に介護されている場合、「ほとんどない」「「月に1回程度」の割合が高く、他に比べると、被介護者の外出頻度が低いことが見出された。 |
一方、嫁によって介護されている場合、「ほとんどない」割合が低く、「週に5回以上」の割合が高く、外出頻度が高いことが見出された。 |
4-2 閉じこもりの理由(問14) |
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介護者が思う、被介護者の閉じこもりの理由で、最も多かったのが「身体的理由」で約半数の介護者が理由としてあげていた。次いで、「人と関わるのが苦手」が16.4%、「精神的問題9」.6%、「出かける場所がない」は8%であった。 |
4-3 普段出かける場所(問15) |
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普段出かける場所では、「デイケア・デイサービス」が最も多く全体の約7割が出かけると回答していた。また、「近所のスーパー」は2割が普段出かける場所と答えている。これら2つの外出先は、被介護者の居住地と介護者の続柄により差が見られた。 |
4-4 居住地別の普段「近所のスーパーなど」への外出行動(問15) |
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「撫養町川西地区・鳴門町鳴門西地区」においては、普段、近所のスーパーなどへ出かける傾向が相対的に高く、「鳴門町鳴門東地区・瀬戸町・北灘町」では普段出かけない傾向が見出された。 |
4-5 居住地別の普段「デイケア・デイサービス」への外出行動(問15) |
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近所のスーパーには出かける傾向の弱かった「鳴門町鳴門東地区・瀬戸町・北灘町」は、デイケア・デイサービスには普段出かける傾向が高く、近所のスーパーに出かける傾向の強かった「撫養町川西地区・鳴門町鳴門西地区」は、デイケア・デイサービスに出かけない傾向が見出された。 |
4-6 介護者の続柄別の普段「近所のスーパーなど」への外出行動(問15) |
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介護者が夫、つまり妻が被介護者の場合は、普段近所のスーパーなどに出かけている事が見出された。また、介護サービスを受けている被介護者も、普段近所のスーパーなどに出かけていることが見出された。一方、嫁が介護している場合は、普段は近所のスーパーなどへ出かけない傾向がある。 |
4-7 介護者の続柄別の普段「デイケア・デイサービス」への外出行動(問15) |
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普段「近所のスーパーなど」には出かけない割合が最も高かった、嫁に介護されている被介護者が「デイケア・デイサービス」に普段出かける割合が最も高く85%を占める。同様に、娘が介護者である被介護者も8割を越えている。全体的に「デイケア・デイサービス」に出かける割合は高いが、夫、介護サービス事業者、その他では出かけるのと出かけないのがほぼ同数の50%で、相対的には出かけない傾向が見られた。 |
5 介護に関するサービス利用 |
5-1 介護サービス利用(問16) |
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介護サービスは9割以上が利用している。居住地、続柄、被介護者の年齢において、大きな差はなかった。 |
5-2 利用しているサービスの種類(問17) |
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最も利用されているサービスは、「事業所・通所介護サービス」で約6割の方が利用している。次いで、「福祉用具のレンタル・販売」「訪問介護サービス」が約3割、「訪問看護・訪問リハビリ」「急な入院、ショートステイ」「バリアフリー目的の住宅改修」が1割前後であった。 |
5-3 居住地別のサービス利用(問17) |
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居住地別に上記の6つのサービス利用との関係をクロス表分析でみたところ、「バリアフリー目的の住宅改修」において、居住地間に大きな差が見られた。「大麻町」ではほとんど利用されていないが、「撫養町川西地区・鳴門町鳴門西地区」「鳴門町鳴門東地区・瀬戸町・北灘町」において、利用率が高い傾向が見出された。 |
5-4 介護者の続柄と6つのサービス利用との関係クロス表分析を行ったところ、「事業所・通所介護サービス」、「訪問介護サービス」「訪問看護・訪問リハビリ」「急な入院、ショートステイ」において関係が見られた。 |
5-4-1 介護者の続柄別の「事業所・通所介護サービス」利用の有無 |
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嫁、娘が介護者である場合、7割以上が「事業所・通所介護サービス」を利用している。息子の利用率は平均的であり、介護者が、その他、介護サービス事業者の場合4割以下しか利用しておらず、夫・妻も、相対的に利用しない割合が高い傾向にある。 |
5-4-2 介護者の続柄別の「訪問介護サービス」利用の有無 |
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介護サービス事業者が主たる介護者の場合、訪問介護サービス利用は100%になるはずだが、9ケースにおいて、訪問介護サービス利用を選択していない。これら9ケースのうち、グループホーム入居が5ケース、認知症対応型共同生活介護所に入所が1ケース、「事業所・通所介護サービス」を選択しているのが2ケース、「福祉用具レンタル・販売」のみを選択しているのが1ケースであった。 |
「訪問介護サービス」利用は、介護者が「嫁」「息子」である場合は、2割程度しか利用されておらず、娘の場合は3割程度まで上がる。 |
5-4-3 介護者の続柄別の「訪問看護・訪問リハビリ」利用者の有無 |
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介護者が嫁や娘の場合は、利用率が10%以下と低い傾向があり、一方で、介護者が妻の場合は、約四分の一が利用しており、夫の場合も約20%が利用している。夫婦間での介護の場合利用され、2世代間の介護では利用が少ない傾向がみられる。 |
5-4-4 介護者の続柄別の「急な入院、ショートステイ」利用者の有無 |
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介護サービス事業者や夫は、利用率が低く2%台である。嫁の約四分の一が利用している。 |
5-5 介護保険の自己負担額 |
本調査では、介護サービスの金銭的負担を把握するために、介護保険の自己負担額(1割負担)を聞いている。 |
回答者は433名、最小値は1000円で、最大値は99000円であったが、介護保険の自己負担額は、要介護度によって、条件が定められており、要介護度5の35830円が最高となる。そこで、要介護度ごとの上限以上の金額を回答しているものは、その上限に金額を丸めた(要介護5が35830円・要介護4が30600円・要介護3が26750円・要介護2が19480円・要介護1が16580円)。 |
修正後の値は、最小値1000円、最大値35830円。平均値は14891円、中央値は15000円、最頻値は19480円であった。25%タイルは8000円、50%タイル(中央値)は15000円、75%タイルは19480円であった。 |
5-5-1 居住地別の介護保険自己負担額(問17SQ1) |
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被介護者の居住地別の介護保険のひと月の自己負担額の平均は大きな差がなかった。最も低かったのが「撫養町川西地区・鳴門町鳴門西地区」の141547円で、最も高いのは大麻町の15589円であった。 |
5-5-2 続柄別の介護保険自己負担額(問17SQ1) |
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介護者の続柄別の介護保険自己負担額の平均はわずかながら差が見られた。介護者が夫の場合が最も低く10219円、13000円台がその他と介護サービス事業者、14000円台が娘と妻、15000円台が息子と続き、最も高いのは嫁の17953円であった。 |
5-6 介護保険負担以外での全額負担額(問17SQ2) |
介護保険の負担以外に全額負担している方は104名おり、最小値が1000円で最高値が200000円であった。平均が42956円、中央値は15000円、最頻値は15000円であり、平均の高さは高額の負担者の影響をうけた結果である。25%タイルは5691円、50%タイル(中央値)は15000円、75%タイルは78000円である。 |
被介護者の居住地別の差は見られず、介護者の続柄別では平均に差が見られた。 |
5-6-1 介護者の続柄別の介護保険負担以外の全額負担額 |
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介護者の続柄別では差が見られ、介護者の続柄が娘の平均は2万円をきっているが、息子、介護サービス事業者の場合、7万円を越えている。 |
5-7 サービスへの満足度(問18) |
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利用しているサービスについての満足度を聞いた結果、「満足している」が約半数を占め、「やや満足している」が35%と、両者で全体の8割を占めており、満足度が高いことが見出された。居住地別や続柄別で目立った差は見出されなかった。 |
5-8 サービスの不満の理由(問19) |
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利用しているサービスの満足度の質問(問18)に対して「やや不満である」「不満である」と回答した23名に不満の理由を尋ねている。「介護の技術に不安」と回答したのは全体の39%で最も高く、「従業員の態度が悪い」との回答は1人もいなかった。 |
5-9 介護サービスを利用しない理由(問20) |
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介護サービスを利用していない(問16)と回答した37名に対して、介護サービスを利用しない理由を尋ねている。最も多かったのは、「本人が希望しない」で全体の43%が理由に挙げていた。 |
6 介護者の精神的健康(問21a) |
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精神面での健康度は、老人用うつスケール短縮版(Geriatric Depression Scale short form: GDS)を用いて測定した。この尺度の得点は、15点満点で、得点が高いほど抑うつ傾向が強いこと(精神的健康度が低いこと)を表す。 |
下図は介護者の続柄別にみた平均得点であるが、嫁の平均得点が最も低く、妻の平均得点が最も高いが、大きな差ではない。被介護者の居住地別の分析も試みたが、地区別に大きな差は無かった。 |
7 介護者の健康度自己評価(問21b) |
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夫は、「あまり健康でない」「健康でない」との回答が合わせた5割を越え、妻も4割を越え、他に比べると相対的に健康度が低かった。嫁は「まあ健康(普通)」との回答が7割を越えており、健康度が高かった。 |
8 ソーシャルサポート |
8-1 この1ヶ月の間に、心配事や悩み事を聞いてくれた人(問22) |
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介護者にこの1ヶ月の間に、心配事や悩みを聞いてくれた人を尋ねた結果が以下の図である。最も多くの方が悩み事を聞いてくれたと答えたのが、「別居の家族・親族」で、全体の65%の方が悩みを聞いてくれたと答えている。次いで、友人、配偶者の約3割、同居家族の2割となっている。親族以外のケアマネージャーは21%、介護サービス事業者も18%と、悩みを聞く対象となっている。近所の人は1割弱、「民生児童委員・役所の人」「ボランティア・地域グループ」は、本調査結果からはほとんど悩みを聞く対象となっていなかった。 |
8-2 介護者の続柄別の悩みを聞いてくれた人の有無(問22) |
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現在お世話している方を含まないために、夫婦介護(夫・妻)の場合は、配偶者が対象からははずれる為に、夫、妻では、悩みを聞いてくれた人がいない割合が他に比べると高くなっている。息子、介護サービス事業者、娘、嫁では、9割以上に悩みを聞いてくれた人が存在していた。悩みを聞いてくれた人がいない割合が最も高かったのは夫の23.3%であり、最も少なかったのは嫁の2.1%であった。 |
8-2 この1ヶ月の間に、介護のことをねぎらってくれた人(問23) |
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介護者の4割弱が、「別居の家族・親族」に介護のことをねぎらってもらっており、最も高い割合を示していた。次いで、「友人」が約3割、「配偶者」が25%を示しており、心配事を聞いてくれた人の順序と同じである。「同居家族」「介護サービス」「近所の人」「ケアマネージャー」が2割弱を占め、相談相手よりも介護をねぎらう人として近所の人が機能していることが見出せる。「ボランティア・地域グループ」「民生児童委員・役所の人」の割合が少ないのは、相談相手と同様であった。 |
8-3 介護者の続柄別の介護をねぎらってくれた人の有無 |
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この1ヶ月の間に、介護をねぎらってくれた人の有無を、続柄別にみたのが下の図である。全体では、9割にねぎらってくれる人が存在しているが、「その他」のいない割合は3割と高く、夫、息子、妻も、介護をねぎらってくれた人がいない割合が2割弱を占め、他に比べると高い割合を占めている。 |
心配事の質問同様、現在お世話をしている方は除くので、夫婦介護(夫、妻)の場合、配偶者は対象に含めないために、夫、妻の場合配偶者が含まれないので、ねぎらってくれた人が少なくなると考えられる。 |
8-4 被介護者との関係(問24) |
8-4-1 ねぎらってくれる |
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介護者が被介護者を介護する上での、介護者と被介護者との関係をいくつからの点から尋ねている。下図は、被介護者が介護者の介護をねぎらったことがあるかどうかを続柄別に見たものである。全体では、ねぎらいがない(「ほとんど(全く)ない」と「時々ある」の合計)とねぎらってくれる(「あまりない」と「よくある」の合計)は半々であるが、妻はねぎらいがないが約6割を占めている。一方、夫はねぎらってくれるが約7割を締めて好対照である。また、その他でもねぎらってくれる割合が高い。 |
8-4-2 一緒にいるとほっとする |
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被介護者と一緒にいるとほっとすることがあるかについて続柄別にみたものである。 |
夫のほっとする割合(「時々ある」と「よくある」の合計)は、7割を越えている。その一方で、嫁はほっとしない割合が7割を越えており対照的である。 |
8-4-3 手助けを必要としていた時に、放っていたことがある |
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被介護者が手助けを必要としている時に、放っておいた事があるかを、続柄別に尋ねたのが下図である。妻の「ほとんどない」との回答は約7割であり、非常に高い割合を示す一方で、娘は41%と相対的に割合が低い傾向にある。また、嫁は「あまりない」割合が4割を越え、相対的に高い傾向にある。 |
8-4-4 全てを任されていると思うか |
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被介護者が、介護者に全てをまかせてくれていると思うことがあるかを、続柄別に尋ねたのが下図である。全体の7割が全てを任せてくれる(「時々ある」と「よくある」の合計)と答えている。妻の5割は「よくある」と回答し、息子は3割ぐらいであるが、全体として大きな差は無かった。 |
8-4-5 心配事や悩みを聞いてくれる |
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被介護者が、介護者の心配事や悩み事を聞いてくれることがあるかを、続柄別に尋ねたのが下図である。嫁の7割が「ほとんどない」と答え、最も高い割合を示している。一方、妻や夫はその半分の約35%であり、対照的である。夫はとその他は、「よくある」と答えている割合が高い。特に、介護者が夫である場合の5割強がある(「時々ある」と「よくある」の合計)と答えており、高い割合を示している。 |
9 介護負担感(問25、26) |
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介護負担感の測定には、Zarit Burden Interview(ZBI)を用いた。S.H.Zaritによれば、介護負担とは「親族を介護した結果、介護者が情緒的、身体的健康、社会生活および経済状態に関して被った被害の程度」と定義される。ZBIはこの操作的定義にもとづき、身体的負担、心理的負担、経済的困難度などを総合的に測定する尺度。本尺度は22の質問項目により、88点満点で、得点が高いほど介護負担感が高いことを表す。 |
下図は、介護者の続柄別に介護負担感の平均点である。介護負担感得点の最も高かったのは妻で、36.9点で、平均点を上回っていた。夫、娘、嫁は平均点前後で、息子とその他が平均点を下回っていた。 |
10 介護についての不安や不満(問27) |
10-1 自分の介護の仕方がこれでよいのか不安 |
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自分の介護の仕方がこれでよいのかと不安に思うことがあるかと、続柄別に尋ねたのが下図である。娘の5割以上が、不安がある(「時々ある」+「よくある」)と答えており、最も高い割合を示している。次いで妻の4割と続く。嫁はよくあると答える割合が低く、あまりないと答える割合が高い傾向にある。 |
10-2 介護は自分にしかできないと思う |
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被介護者の介護は自分にしかできないと思うことがあるかと続柄別に尋ねたのが下図である。妻のよくあるが約3割と高いが、続柄の違いで大きな差はなかった。全体では、介護は自分にしかできない(「時々ある」と「よくある」の合計)と、思わない(「ほとんどない」と「あまりない」の合計)が、半々である。 |
10-3 いつまで介護を続けられるか不安 |
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いつまで介護を続けることができるか不安になることがあるかと、続柄別に尋ねたのが、下図である。全体の7割以上が不安になることがあると答えている。 |
妻の8割以上は、不安になることがあると答えており、最も割合が高い。その他の3割は、ほとんど無いと答えており、特徴的である。 |
10-4 なぜ自分が介護をしなくてはならないのかと感じる |
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なぜ自分が介護をしなくてはならないと感じるのかについて続柄別に尋ねた下図である。全体では、自分が介護をしなくてはならないと感じるのは約3割であるが、その他の5割、嫁の4割強が自分が介護をすることに不満を感じており、割合が高い。一方、息子の7割強が、なぜ自分が介護をしなくてはならないと感じる事はなく、好対照である。 |
10-5 十分なお世話をしてあげられていないと思う |
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十分なお世話をしてあげられていないと思う事があるかと、続柄別に尋ねたのが以下の図である。娘の6割以上が十分なお世話をしてあげられていないと思う一方で、妻の6割は十分なお世話してあげられていないとは思っていない。 |
11 介護を続けてゆく上での問題 |
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介護を続けていく上での問題点において、全体の半数は「緊急時の援助が受けられるか」を上げていた。次いで「経済的不安」46%、「家族との協力体制」41.3%となっている。「市からの十分な支援が受けられるか」31%、「事業所からの十分な支援が受けられるか」25%、最も少なかったのが、「相談相手がいない」の10%であった。 |
11-1 続柄別の緊急時の援助 |
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緊急時に援助が受けられるかどうかを、続柄別に尋ねたのが下図である。娘の65%が、緊急時に援助を受けられるかに問題を感じており、最も高い。 |
11-2 続柄別の家族との協力体制へ問題を感じるか |
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嫁の5割以上は、介護への家族との協力体制をとれるかどうかに対して問題を感じている。 |
11-2 現在どのように生活しているのか(問29) |
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問28の介護を続けてゆく上で「経済的な不安」と回答した202名に、現在はどのように生活しているのかを尋ねている。34%が同居者の給料で生活しており、年金受給と答えた方が最も多く64%であった。公的な援助や、親戚・知人から援助を受けている者はほとんどなかった。 |
12 年収 |
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被介護者の年収は「100万未満」が27%、「100-200万未満」が最も多く36%、「200-300万円未満」22%、「300-500未満」が11%、「500-700万未満」「700万円以上」は2%であった。 |
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